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英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1)

今日、米国東海岸時間で11時頃から、英米で主に編集されてる(出版は英国)総合科学誌の「ネイチャー」が、オンラインで福島原発事故に関するQ&Aを行いました。「ネイチャー」誌は、事故発生当時から、ブログやオンラインの紙面で、事故そのものや、それに関する現地測定のデータ、さまざまな国のさまざまな機関によるモデル試算の結果、日本や国際の関連機関のプレスリリースなどを、地道に報道してきました。それらは、こちらにまとめられています。⇒ http://www.nature.com/news/specials/japanquake/index.html

「ネイチャー」誌は、事故当初から、「総合科学誌」としての立場から、客観的に、刻々とレポートされてくる数値と過去の例(チェルノブイリなど)に基づく報道や社説を出してきています。記事は、科学に基づいてはいますが、科学者のためだけではなく、一般の人のために書かれています。このQ&Aは、「ネイチャー」側が読者の質問に答えているわけですが、質問はモデレーターにチェックされてからチャットに出てくるようになっていたので、筋の通った、読みやすいQ&Aになっています。原文のチャットは、ここです。⇒ http://blogs.nature.com/news/thegreatbeyond/2011/04/japans_nuclear_disaster_live_q.html?WT.mc_id=TWT_NatureNews

Q&Aの訳(Part 1)

Brian Owens: こんにちは。福島原発の事故のQ&Aへようこそ。University of Portsmouthの環境物理学者のJim Smithと、Nature誌の自然科学論説員のGeoff Brumfielが皆さんの質問に答えます。

BO: さっそく始めましょう。まず、お嬢さんが日本で留学してる人と、あと、韓国へ行く予定の人から、日本への渡航の安全についての質問が来てます。

JS: 日本以外の国への渡航には、放射線によるリスクはありません。飛行中に宇宙線から受ける放射線のほうが、福島のせいによる放射線より高いでしょう。日本国内そのものでも、福島からの放射線をあびてしまうというリスクはかなり低いです。なぜかというと、(1)放射能汚染された食べ物は、流通ストップされてる、(2)40-50キロメートルより外の地域では、福島原発から飛んできた放射線物質はごくわずか、(3)水系に混ざっている放射性のヨウ素はさっさと崩壊していて、あと数週間で事実上なしになります。というわけで、わたしとしては、放射線よりは、震災と原発事故によるインフラやサービスが滞っていることや、人々が普通の心理状態じゃない、ということのほうが、日本への渡航の際には問題になってくると思います。

BO: ありがとう。ナーバスになってる旅行者には安心してもらえるかな?ではGeoff、「台風や地震のたびたび来る地域で、汚染された水(核燃料の冷却水)を安全に保管する方法はあるんでしょうか?冷却水の汚染のリークがひどくなりすぎて、もうこれ以上は水冷できない、というようなことになってしまうようなことはあるんでしょうか?」という質問がPeggyさんから来てます。

GB: うーん、これは「Million-dollar questions」(百万ドルあったら実際に解決できる、というたとえ)ですねえ。残念ながら、いまのところは誰も確かなことはわからない状態だと思います。当面は、現場の技術者たちは、いまあるタンクに、高濃度に汚染された冷却水を保管する計画です。そのために、今までそのタンクに入ってた、低レベルの汚染水を太平洋に流し出してます。このタンクは、先月の地震と津波でダメージ受けなかったわけですから、とりあえずは台風と地震が来ても大丈夫、と言えると思います。でも、もともとは高レベルの汚染水を入れるようにデザインされてはないですから、その意味では、とりあえずはよしとしても、長期的な解決策ではありません。

GB: そして2つ目の質問ですが、汚染水のリークが今後悪化してしまうかどうか、っていうのは、予測しかねます。というのは、原発の中のダメージの状態がどの程度のものなのか、いまのところわかってないからです。今現在では、東京電力は二号機のところのいちばんひどかったリークは止めたんですが、他のリークの可能性は否定してません。でも、一応言っておきたいのは、この10日間ほどは、原発の内部の状態は、まあまあ安定しているようです、ということです。

Zoeyからのコメント: 海水の137Csや131Iのレベルが、いまのところかなり高いにもかかわらず、海ですぐに薄められるから大丈夫、と聞きました。これは本当でしょうか?近隣国への影響は?

JS: はい、たしかに、海洋では、放射能はかなり薄められます。もし仮に(ホントに仮に、です)、海水中の汚染物質が海を渡って他国へ届いたとしても、リスクがないレベルまで薄められています。だから、海洋の汚染の問題は、福島の海岸沿いに限られた問題です。

GB: あと、フランスの機関がIAEAにモデル試算の結果を提出してますが、ご質問の直接の答えにはなってませんが、まあ、福島から放出された物質がどのように拡散していくかの参考にはなると思います。http://sirocco.omp.obs-mip.fr/outils/Symphonie/Produits/Japan/SymphoniePreviJapan.htm

Sonny Trenchからのコメント:でも、汚染された魚が海を渡りませんか?

BO: いい質問ですねえ。私も答えが知りたいです。Jim?

JS: ええ、たしかに良い質問です。私は原発の地域にどんな種類の魚が生息してて、どの程度の距離を渡るのか、わからないんですが、もし、魚が汚染された地域にかなり長い間いたら(放射能物質が海の食物連鎖をつたって魚にたどりつくまでにはいくらか時間がかかります)、魚も汚染されるでしょう。海を渡っていくあいだに、そのいくらかは、排泄と同位体の崩壊によって減っていきます。でも、137Csはいくらかは残るでしょうねえ。もし福島近辺に遠洋まで海を渡る種類の魚が生息してるんだったら、モニターする必要があると思います。

Madgdeline Lumからのコメント: 福島は、いつまでこのような状態が続くのでしょう?大手のメディアは最初の頃はまるで映画みたいに報道してて、でもって、いまだに終わりが見えないので、どうしていいかわからない、という感じなんですが。

GB: どうしていいかわからない、と感じてるのはメディアだけじゃないと思いますよ。原発は、まだ予測のつかない状況だし、次にどうすればよいのか、決断するのはかなり難しい状況です。今現在言えるのは、福島の状況は、終息するまでにはまだ何年もかかる、ということです。まずは、全部の炉心そのものを、コントロール出来る状態まで持っていかないとなりません。でも、それが達成できた後、汚染を浄化しなければいかません。これは、かなり大変なプロセスです。

GB: 私、今日、1957年に起こった英国のWindscaleの事故のことをおさらいしてみたんですが、いまだに汚染の浄化除去、続いてるんです。スリーマイル島の汚染をきれいにするのには14年かかりました。福島原発近辺の環境を浄化するのには、何十年もかかると思います。

JS: 魚の話に戻りますが、チェルノブイリのあと、渡り鳥がモニターされました。確か、渡り鳥に限っていえば、食物連鎖系に放射能汚染が見られる、という問題はありませんでした。

(Part 2はこちら

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39 thoughts on “英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1)

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  4. 記事のご紹介・翻訳ありがとうございます。

    Million-dollar questionsは値千金の質問(非常に良い質問)ぐらいではないでしょうか。

    http://wiki.answers.com/Q/What_is_the_meaning_of_the_term_Million_Dollar_Question

  5. 翻訳お疲れさまでした。とても参考になりました。

  6. Kyo Nishiyama on said:

    Million-dollar questions: 究極の質問(答えられたら苦労しないというたぐいの質問)
    100万ドルの賞金を変えられた問題という意味から。

  7. Kyo Nishiyama on said:

    「冷却水の汚染のリークがひどくなりすぎて、もうこれ以上は水冷できない、」
    はなんだか変ですね。おそらく
    「汚染された冷却水が漏出してしまうため、(冷却水を補充できないから)燃料棒を冷却できなくなってしまう」
    ではないでしょうか。要するに高濃度の汚染水が漏れてしまう→漏出を防ぐために冷却水を補充できない→そうすると燃料棒を冷却できない、ということだと思います。

  8. こまち on said:

    「Million-dollar questions」(百万ドルあったら実際に解決できる、というたとえ)とありますが
    million-dollar questionは「解決できたら百万ドル」という難しさを言った語ではないですか?確かクイズ番組からとった表現だったような気がするのですが。

  9. Pingback: 英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1) #smartgridj | Smart Grid Japan

  10. 津田和俊 on said:

    twitter経由で知りました。翻訳どうもありがとうございました。
    ただ、内容にちょっと首をかしげる点がいくつかあったので(訳が悪い、というわけではなく、元の内容が、という意味です)原文のサイトを改めて読んでみると、最後のAFTER Q & A COMMENTで既に指摘されていました。
    かなり重要な内容が含まれておりますので、このAFTER Q & A COMMENTの部分も補足として付け加えたほうがよいと思います。

    • yoko71 on said:

      そうですね。ありがとうございます。原文のところのコメント欄についたコメントには、いくつか大事なことが挙がっているようので、今日の昼休みか今夜、読んでみたいと思います。

  11. あさひ on said:

    http://wiki.answers.com/Q/What_is_the_meaning_of_the_term_Million_Dollar_Question

    によれば、次の意味です。
    「解決するには百万ドルかかる」(重要だけれど現実的には解決できないほど難しい)

    つまり、
    > 百万ドルあったら実際に解決できる

    ではなくて、その反対の
    「解決できない」
    という意味です。

     女の子が男に「目の前に1億円積んでくれたら、あなたと結婚してあげるわ」と言って、結婚を拒むのと同じ。「できない」という意味です。

    • yoko71 on said:

      あ、そういう意味でもあるんですね。結構ふだんから使ってる言葉でも、実際日本語に翻訳するとなると、難しいです。どうもありがとうございました。

  12. Pingback: 2011/04/07の気になった記事 « wired raven

  13. こんばんは。ツイッター経由で来ました。
    地震対策や原発事故関連の情報を、私自身が不安で心配でたまらないので色々情報を集め、そのついでにポルトガル語訳して発信しています。
    英語はあまり得意ではないので、こちらで訳されたものを参考にさせてください。

  14. Hiromi on said:

    翻訳ありがとうございます。
    こういった情報は科学者じゃない一般人のかてになります。
    ありがとう!

  15. Pingback: 山の眺め » 科学誌ネイチャーによる福島第一原子力発電所事故 Q&A

  16. Pingback: Starting Small « - Yota -

  17. Pingback: Top Posts — WordPress.com

  18. AZURE on said:

    翻訳お疲れさまです。

    非常に良い内容だと思いました。 もっとたくさんの人が読んでくれるといいですね。

  19. Pingback: 英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1) - ニュースちゃんねる

  20. Sorry for your loss.

  21. houraijin1981 on said:

    記事の翻訳・紹介ありがとうございます。
    ツイッターで紹介させていただきます。

  22. 8586 on said:

    教えてくださってありがとうございます。
    アドレス共々私のブログでも紹介させていただきます。

  23. Pingback: Yoko Furukawa さんによる日本語訳、Part 4で完結しました。ありがとうございます – 英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1) | Starting Small « - Yota -

  24. T. Maeda on said:

    Twitter経由でこちらのエントリを知りました。
    翻訳ありがとうございます!

    信頼度が不明な情報が多いので、こうした確度の高い情報を紹介していただき、非常に有難いです。
    (ひと通り声に出して読ませていただきました(笑))

    日本語Blogosphereで今後頻繁に参照されるであろう価値の高いエントリだと思いましたので、
    差し出がましくて恐縮ですが、音読の道すがら拾ったtypoと思われるものを下記に記しました。ご確認いただければ幸いです。

    (Part 2)
    Drew Wight → Drew Wright
    (Part 3)
    ヨウ素要素とセシウムが → ヨウ素とセシウムが
    地震や津波の危険のさらされている → 地震や津波の危険にさらされている
    (Part 4)
    データの解釈かしずらいのは事実です。 → データの解釈がしづらいのは事実です。
    解釈が一筋縄ではないでの、 → 解釈が一筋縄では行かないので、

  25. Pingback: 英語圏の総合科学誌「ネイチャー」の福島原発事故Q&Aの日本語訳(Part 1) (via Starting Small) « Jesse1212's Blog

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